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大阪高等裁判所 昭和61年(ラ)454号 決定 1986年12月08日

抗告人

京土開発株式会社

右代表者代表取締役

宮崎平八

右代理人弁護士

藤田元

主文

一  原決定を取消す。

二  本件を京都地方裁判所に差戻す。

理由

第一本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

第二当裁判所の判断

一民事執行規則四九条、三八条二項四号により記載すべき入札価額は具体的な金額を明瞭に記載しなければならないが、いつたん記載した入札価額の記載を訂正した入札書であつても、訂正個所に真正な訂正印が押されていれば、これを有効と解してよいし、またこれに訂正印が押されていない場合であつても、本件の入札価額の記載のように漢文字によつて記載された金額と算用数字によつて記載された金額とが、次のとおり実質的に同額を示しているものと認められ、その間に実質的な差異が認められない場合は両者は単なる同額の重複記載にすぎず、誤記による訂正として訂正印をするまでもなく、有効な入札書として取扱うべきである。

二本件事件記録中の本件入札書(記録一一四丁)をみると、入札価額欄に算用数字をもつて「¥31,000,000」と表示するほか、同欄に「金参百万」との記載があり、一見両者に喰い違いがあるようにも見えるけれども、この漢文字をよくみると、入札価額欄は左記のとおり表示され、「億」の欄に「金」と、「千万」の欄に「参」と、「百万」の欄に「百」と、「十万」の欄に「万」と記入されており、しかも入札書には入札金額を必ず算用数字をもつて記載すべきものとの注意書もないから、これに漢文字をもつて記入しようとすれば、本件抗告人が記入したような方式によることもやむを得ないといえるのであつて、前示千万、百万、十万、万の単位欄と漢数字を対応させて読めば、これが三、一〇〇万円を表示するものと解し得るというべきである。

千万

百万

十万

第三結論

よつて、本件入札書を入札金額の記載により無効であることを前提として、次順位買受申出人(入札価額二、八三九万一、〇〇〇円)に売却許可をした原決定は違法であるから、これを取消し、本件を京都地方裁判所に差戻すことにし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官廣木重喜 裁判官諸富吉嗣 裁判官吉川義春)

別紙抗告の趣旨

原決定を取消し、更に相当の裁判を求める。

抗告の理由

一、抗告人は上記競売事件の開札期日である昭和六一年九月二六日に、入札価額金31,000,000円を申し出た最高価買受申出人である。

二、抗告人は、入札書において、漢数字で誤つて金参百万円と誤記し、又同欄に算用数字にて¥31,000,000円と明記していたものであるが、裁判所は、漢数字で書かれた誤つた金額を入札価額としてとりあげ、次順位買受申出人である有限会社三井商事に対し、売却許可決定をなしたものである。

しかるに、本件競売において、最低入札価額は金二七、八八〇、〇〇〇円でありしかも入札にかかる保証の額も金五、五七六、〇〇〇円といずれも金三〇〇万円を上回るものであり、当然、抗告人としては、本件物件の買受を希望するにあたり、真意に入札価格を金31,000,000円としていたもので、且つ、抗告人の意思はあくまでも金31,000,000円である。

ゆえに、漢数字の金額が誤記であることは明白であり、抗告人は、本件競売において、最高価買受申出人であり、裁判所は、右抗告人に対し、売却許可決定をなすべきであるのに、それをしなかつたことにおいて不当であると言わなければならない。

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